投稿

2月, 2026の投稿を表示しています

『被害者を理解するための気もちの言葉エクササイズ』では誤答への対処も重要

イメージ
 『気もちの言葉エクササイズ』はあと少しで上梓できそうです。  このエクササイズでは17枚のワークシートに回答しますが、誤った回答への対処も重要です。単なる言葉のドリルではありません。  シート1.では「ときどき感じる気もちの言葉を4つ書く」という課題です。感情語を4語なら簡単だと思われるかもしれませんが、「かなしい」「うれしい」と書き、少し考えて、「重い」とか「明るい」が出てくることがあります。  「重い」には、①重量が重い、②押さえつけられているような感じで消極的な気分、③普通の程度を超えている、という意味が辞書には出てきます。感情は②だけですので、感情を表しているかを確認する必要があります。「明るい」も同様です。  気もちの言葉(感情語)かどうかを即断しにくい表現もあります。例えば、「したくない気もち」などは確かに気もちだと言いますが、感情とは言い難く、拒否(承諾しないこと)に近いと思われます。こんなときには、 見え消し を使い、あらためて別の気もちの言葉をあげるよう促します。あたまから違う!と否定しない方がやる気をそがないと思えます。  感情は過去の経験とつながっていることが多く、時には不快な経験であることもあるところから、あらためて問い直し確認する時には、慎重に行うことが必要な場合があります。   昨年の11月13日のブログですでに書いたことですが、シート4.は、「場面と感情語のマッチング」として、図のように左の場面と右のその時の感情をあらわす言葉を線で結ぶ課題です。  「家族とすごす」に対して、「不安」や「ひとちぼっち」を結びつけたとき、違和感は感じますがすぐに間違いだとはしません。多くの人はそうしたマッチングはしないと思えます。多くの人(多数派)の見方を押し返すほどの特異な経験をしたかもしれないし、多数派の見方を知らないのかもしれません。やはり、本人に慎重に確認する必要があります。  「ペットが死んだ」に対して「うれしい」とか「退屈だ」とマッチングされると言葉の知識に誤りがあるかもしれません。  回答に対しては、正誤や適否だけでなく、知識の有無や偏り、結びついた経験の内容などていねいに確かめます。同時にそれが心理支援(心理セラピー)のプロセスでもあります。『被害者の理解するための気もちの言葉エクササイズ』が言語的知識をテーマとしたワー...

『被害者の理解するための気もちの言葉エクササイズ』のキーワードの一つは知的・発達障害者です。

イメージ
  『被害者の理解するための気もちの言葉エクササイズ』のキーワードは、被害者への共感的理解、感情、オノマトペ、知的・発達障害者の4つです。これらのいくつかについては、この久闊通信やその前身の種智院大学のブログでも書いています。内容が重複することはご容赦いただき、あらためてそのいくつかをご紹介します。 われわれの刊行物はいずれも知的障害者、発達障害者を対象としています。 本多隆司・伊庭千恵 (2015) 『性問題行動のある知的障害者のための 16 ステッップ:「フットフプリント」心理教育ワークフブック 第 2 版』明石書店   本多隆司・伊庭千恵 (2016) 『性問題行動のある知的・発達障害児者の支援ガイド:性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック「性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック」明石書店   本多隆司・伊庭千恵 (2021) 『心理教育教材「キックスタート,トラウマを理解する」活用ガイド:問題行動のある知的・発達障害児者を支する』 明石書店(2021)  われわれは、2006年第53回小児保健学会での発表以来、ASB研究会( A nti S ocial B eviour反社会的行動研究会)と称して、知的障害者、発達障害者に対する支援の研究と実践を行っています。(今年は20+α周年)   知的障害と発達障害は重複することも多く支援の内容も共通することもありますが、知的障害とすると発達障害のほうからは関係ないとされ、逆に発達障害対象だとすると知的障害からは違うと受け取られる懸念があります。 知的・発達障害という折衷の表現にしています。   知的障害の定義は、AAIDD(American Association on Intellectual and Developmental Disabilities 米国知的・発達障害学会/協会)による「「知的機能(学習、推論などの一般的な精神能力)と適応行動(日常生活で学習し実際に行う行動)の両方に有意な制限がある状態であり、21 歳以下の年齢から始まる」(AAIDD, 2022)とされています。  感情の認知やその表出、感情語の理解や表現には障害特性による制約があります。しかし、認識が正しいかどうか、感情(語)の理解や使用が適切かどうか、表現が多いか少ない...