『被害者の理解するための気もちの言葉エクササイズ』のキーワードの一つは知的・発達障害者です。

  『被害者の理解するための気もちの言葉エクササイズ』のキーワードは、被害者への共感的理解、感情、オノマトペ、知的・発達障害者の4つです。これらのいくつかについては、この久闊通信やその前身の種智院大学のブログでも書いています。内容が重複することはご容赦いただき、あらためてそのいくつかをご紹介します。

われわれの刊行物はいずれも知的障害者、発達障害者を対象としています。

本多隆司・伊庭千恵(2015)『性問題行動のある知的障害者のための 16 ステッップ:「フットフプリント」心理教育ワークフブック 第 2 版』明石書店 

本多隆司・伊庭千恵(2016)『性問題行動のある知的・発達障害児者の支援ガイド:性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック「性暴力被害とわたしの被害者を理解するワークブック」明石書店 

本多隆司・伊庭千恵(2021)『心理教育教材「キックスタート,トラウマを理解する」活用ガイド:問題行動のある知的・発達障害児者を支する』 明石書店(2021)

 われわれは、2006年第53回小児保健学会での発表以来、ASB研究会(AntiSocial Beviour反社会的行動研究会)と称して、知的障害者、発達障害者に対する支援の研究と実践を行っています。(今年は20+α周年)

  知的障害と発達障害は重複することも多く支援の内容も共通することもありますが、知的障害とすると発達障害のほうからは関係ないとされ、逆に発達障害対象だとすると知的障害からは違うと受け取られる懸念があります。 知的・発達障害という折衷の表現にしています。

  知的障害の定義は、AAIDD(American Association on Intellectual and Developmental Disabilities 米国知的・発達障害学会/協会)による「「知的機能(学習、推論などの一般的な精神能力)と適応行動(日常生活で学習し実際に行う行動)の両方に有意な制限がある状態であり、21 歳以下の年齢から始まる」(AAIDD, 2022)とされています。

 感情の認知やその表出、感情語の理解や表現には障害特性による制約があります。しかし、認識が正しいかどうか、感情(語)の理解や使用が適切かどうか、表現が多いか少ないかだけで、感情のひろがりや深さなどを判断することはできません。知的機能の制約があるとしても、対象者自身の気づきや表現を広げる支援は重要です。

 『気もちの言葉エクササイズ』では分かりやすい表現や表記を心がけました。さきにご紹介したオノマトペ(擬音語・擬態語)の利用もそのひとつです。オノマトペの教育場面での研究として、有働・高野(2007)は養護学校(特別支援学校)小学部の授業での教師と生徒のやりとの分析を通じて、以下のように述べています

オノマトペ的な表現を適材適所で表現し、表現に工夫することで、その力や影響が言語能力発達に偏りがある知的障害児たちの対話を促進することがあるのではないか。(p.26)

 『エクササイズ』の各ページ毎に新出の漢字にはルビ(フリガナ)を振りました。ルビは可読性をあげるだけでなく、利用する対象者が読むのが難しいと思った漢字を支援者や実施者に尋ねるという心理的負担は必要ありません。かってこういった感想を聞いたことがあります。

 どの言葉を漢字にするか、それとも仮名にするかの判断は難しく、日本語教育での基準?もありそうですが、資料を持ち合わせていません。これまでの刊行の経験をもとに漢字仮名の使い分けリストを作りました。仮名がれんぞくして よみにくい ときは、分かち書き(語と語との区切りに空白を挿入する)を取り入れました

  知的障害の発症originateした年齢はかっては18歳未満とされていましたが、脳発達の研究も加味されて21歳以下とされたようです。知的障害のもともとの英語表記は、DSM-Ⅳ-TRではMental Retardation(精神遅滞)でしたが、DSM-VではIntellectual Disability(知的障害)に変わりました。米国の学会/協会は Intellectual and Developmental Disability(知的・発達障害)です。診断名の定義や用語に関しては長年の議論があります。(内山, 2020)

               (タカシホンダ)                             

American Association on Intellectual and Developmental Disabilities(2022)  Defining Criteria for Intellectual Disability. https://www.aaidd.org/intellectual-disability/definition

内山登紀夫(2020)  現在の知的障害に関する国際的な診断基準と、最近の知的障害概念の検討  令和2年度 厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業) 分担研究報告書  chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018037A-buntan2_0.pdf (Feb. 2, 2026)

有働眞理子・高野美由紀(2007) 養護学校小学部に見られるルオノマトペ的発話:対話活性化の言語学的要因 学校教育学研究 第19巻 pp.17-26.(兵庫教育大学学術情報リポジトリ)


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

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