第13章はアセスメントがとりあげられます(その1)
次は第12章「未成年者性犯罪に対する少年司法、立法、政策の対応」はアメリカの少年法の歴史と現状がテーマですが、専門領域からかなり遠いので第13章に進めます。
本書、「未成年者性加害Jevenile Sexual Offendings」は、第1部「問題」、第2部「原因:理論と調査研究」、第3部「未成年者による性加害の結果の重大性」と続き、第4部「矯正:差異に基づく介入」で、3章からなります。
第13章「 包括的個別的評価と継続的アセスメント」TOM LEVERSEE(著)
第14章「連続的なケアによる包括的サービス提供」STEVEN BENGIS(著)
13章は評価、アセスメント、つまり注意深く調べ判断することがテーマです。評価とアセスメントは概念として重なりあうところが多いので、ここではほぼ同義として扱っています。
どういった立場、観点からアセスメントするかを明らかにしておくことが必要です。第3章「原因の理論」、第7章「加害行動に関連した静的要因、安定的要因、動的要因」でもとりあげられている”発達―コンテクスト”という本書の枠組みでアセスメントを組み立てています。発達とは認知、身体、言語などの各領域で、コンテクストとは環境や社会をさし、家族、学校、近隣などでここではマイクロシステムと呼んでます。発達とコンテクストという二つの軸は相互作用し互いに影響しあっており、アセスメントは発達だけ環境だけを対象とするのではありません。そこに加害に向かうリスク要因とそれを防ぐ要因が併存しています。
アセスメントのアプローチには、保険数理的手法、臨床的アプローチ、機能分析があります。
保険数理的手法は、機能に影響しているかもしれないが歴史的で変化しがたい静的要因に焦点を当てており、成人を対象とした尺度はいくつかあるが未成年者を対象としたものはない、と本書は述べている。(p.203)例えば、きょうだい順位は問題行動に関連しているかもしれないが、既に固定しているため変化させることはできません。
一方、臨床的アプローチは、静的要因だけでなく、変化しているまたは変化する可能性のある動的要因に焦点化します。その要因がある出来事の生起の増減にどの程度関与しているかを明らかにし、将来の出現可能性を示すものです。ただ、その精度は十分なものとは言えない、としています。(p.203) 交友関係は問題行動と関連していると思われますが、年齢ととも関係の幅や質は変化するので、関与の度合いも変化します。さらにリスク要因にも加害を防ぐ保護要因にもなり得ます。
機能分析は性加害へのアプローチに欠かせないものです。機能分析は、個人の犯罪パターンに特徴的な犯罪を成立させる要素の連鎖をアセスメントし、犯罪の先行する思考や感情、行動、結果を特定し、これまでも取りあげた性加害サイクルを明らかにするものです。
リスク(Risk)原則・ニード原則(Need)・応答性(Responsiveness)原則からなるRNR原則は刑事司法においてよく取り上げられます。リスク原則は処遇密度を犯罪者の再犯リスクに合わせる、ニード原則は犯罪誘発要因について評価を行い当該要因に的を絞って働きかけを行う、応答性原則は犯罪者が社会復帰支援のための処遇を受ける際の学習効果を最大化する、とされています。(Bonta, J. 2012. p.45)
生育史や家族歴、人間関係、社会的機能、教育、パーソナリティ、発達的コンピテンス、性的経験や興味、非行の履歴、など対象領域は多岐にわたり、性加害は多元的で複合的な要因が関連するため包括的なアセスメントになります。実践にあわせて、保険数理的手法と臨床的アプローチを統合し、実証できる知見や情報に基づいて臨床的な評価や判断が行われます。Bonta, J. 染田恵(監訳) (2012) 日本の犯罪者の社会内処遇におけるRNRモデルの有効性 更生保護学研究 創刊号 pp.43-56
デクラン・カイバーㇳ 坂内太(訳)(2011) 『ユリシーズ』と我ら ー日常生活の芸術ー 水声社
ジャイムズ・ジョイス 丸谷才一・氷川玲二・高松雄一(訳) (2003) ユリシーズⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ 集英社文庫
丸谷才一(2008) 水着の女と『ユリシーズ』 「蝶々は誰からの手紙」 マガジンハウス pp.326-327

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