第13章 後半部では加害そのものをアセスメントします(その3)

  第13章の最後の節は加害の力動に対するアセスメントです。未成年者では、性加害は「性的逸脱を示すというよりも加害そのものの反映」(p.210)だと考えられるので、加害行動そのものや加害を支持する考え方を明確にします。さらに、発達の観点も重要で、性的発達や性加害に関連した発達要因を理解するために性に対するアセスメントを実施します。

 性行動はまた、突然出現したものではなくこれまでの経験に基づく学習の結果だと考えられることから、性を含めて生育史を検討します。性に関するアセスメントを実施すると、ともすればどのような性行動も加害だとみなすおそれがあるので、注意深く情報を収集します。他機関から得た情報についても同様です。

 加害行動の動機や目的には、探索する、模倣する、反応する、補償する、報復する、気分を変える、などが考えられます。着想した時期はいつごろか、状況や推移を予想していたか、計画性はあったか、などを検討します。性にだけ着目し、加害行為は衝動的で思いつきの行動だと思い込むと、その後の支援の方向性を誤るかもしれません。

 リスクやニーズのアセスメントは、その後に続く思春期の発達や生活環境の変化にも対応する必要があります。
 ここではリスクなどを評価するツールついては触れてはいませんが、本書では多数のツールやスケールを紹介し、評価しています。

 リスク・アセスメントでは、加害に対する心理支援や指導を受ける準備が対象者やその家族にあるかどうかも重要です。心理支援や指導を成功するために、対象者のストレングス、利点、能力やモチベーションなどを明らかにしておくことが必要です。さらに、性加害の行為や空想にかわって健全で健康的な方法で欲求を満たそうとするモチベーションや意思を維持しているかも評価の対象です。

 リスクは動的リスク、静的リスク、安定的リスクに分けられます。さらに、人生の出来事や個人的でその人に固有の予見可能な将来のストレス(例えば進学や就職)などの全体的動的リスクと、日々変化する状況、思考、感情、行動などの状況的動的リスクがあります。さらに動的要因には、社会的能力の不足、社会的孤立、親子関係の悪化など長期にわたる要因と、急性の要因として現在のストレス(例えば、転居)があります。

 支援の開始に合わせてアセスメントが行われますが、その後も継続的にアセスメントを行い、リスク管理や日常の生活支援をバージョンアップするために見直していく必要があります。本書では、「時間の経過とともに変化しない静的で信頼できる要因」によってリスクを予測し、「短期間での変化に敏感な動的な要因」に着目してリスクを管理すべきだ、と助言しています(p.218)。そうして、リスクを低減し健康さを増進させる彼らの長所やストレングスを習得あるいは発展を支援します。

 3つに分けてご紹介しましたが、ポイントをまとめることよりも関心が向いたテーマが中心になっており、ふれなかった内容が多いことをお断りします。


 閑話休題。『カフカ断片集』頭木弘樹(編訳)(2024)新潮文庫の表紙には、

海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ」
         (日記ノート10 1915年3月23日)p.158 

という表現が本文から採られています。未完成の小説の断片などがカフカの日記やノートから集められています。

わたしはいちども木にくっついていたことがなく、
秋風に吹かれて舞う木の葉であるけれども、
どの木の葉でもないのだ。   
             (黒い小型ノート 1923年 ) p.135

 この本にはカフカの描いた素描がいくつか挿みこまれています。かたむく平板な身体から極端に細長い手足がつき出ている人物は、失望していても強靭さを失わっていないように思えます。 

       (タカシホンダ)

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