「感情」は「身体活動の変化」だ
「未成年者性加害Jevenile Sexual Offendings」はひとまずおき、唐突ですが、感情をテーマにします。
感情について論じるときに最初に取り上げられるのはウイリアム・ジェイムズWilliam Jamesで、心理学の教科書では「ジェイムズ・ランゲ説(末梢起源説)」として登場します。ここでは、代表的な論文「What is an Emotion ?」(1884)を紹介します。
このタイトルは「感情とはなにか」ですが、最初のハードルがEmotionの訳語です。「感情」じゃないか思われるかもしれませんが、「情緒」や「情動」とも訳されます。feelingやaffectも「感情」と訳され、原著と訳語との対応はさまざまで、定訳があるとは言えないようです。(武藤・白井, 2024)
こうした翻訳上の問題とは別に、「感情」につながる語として、心理学では「情動」が多いようですが、教育では「情緒」も使われました。「情動」は「感情」よりも身体に寄せた印象があるので、われわれの近著の論文では”情動/感情”というどっちつかずの表記にしました。「感情」に近い一般語として「気もち」「~感」「気分」「心持ち」などがあります。「感情」そのものも多義的なうえに、一般語と学術語の境目もいささかあいまいです。
ジェイムズは論文の冒頭から、感情については身体の変化が先行すると主張します。
身体の変化は、興奮をもたらす事実に対する知覚と直接つながり、変化が起こったと続けて、よく知られているフレーズが登場します。
泣くから悔しい、殴るから怒り、震えるから怖がるのであって、悔しがったり怒った熊を見て驚いて逃げるのではなく、熊を見て逃げるのが得策だと判断した、というのです。ここで言う身体とは、内臓だけでなく、 皮膚、血管、呼吸、筋肉など広範囲におよび複雑です。
身体の変化のいかなるものであれ、それが生じた瞬間、鋭くてもぼんやりとしていてもし私たちが強い感情をイメージし、その感情の特徴的な身体的兆候に対する感覚を
私たちにとって、身体的な感覚から切り離された感情は、想像できない。(p.194)
心理学・神経科学の研究者バレット(Barrett, L. F.)は、ジェイムズにブント(Wilhelm Wundt 1832~1920)を加えて、 彼らは思考、感情、知覚は、基本的で多目的な構成要素がさまざまな組み合わせで構成されているという「心理的構築」という考え方の先駆けだとしています。
感情の脳プロセスは通常の感覚の脳内プロセスに似ているだけでなく、実のところ、そのようなプロセスがさ感情と身体の関係を論じたのは、オランダの哲学者、スピノザ (Benedictus de Spinoza, 1632-1677)です。 による『エチカ』第3巻冒頭の定義Ⅲ(www.gutenberg.orgの英訳版)で明快に定義されています 。
「感情」とは、身体の変容を指し、これにより当該身体の活動力が強化され、または弱
められ、促進され、または制約される状態、およびそのような変容に関する概念を意
味する。
感情は、身体活動の変化、またはその表象(概念)だと主張します(大平, 2007, p.5)。この流れはスピノザ‐ジェイムズ‐ダマシオ‐バレットと続きます。 (タカシホンダ)
Barrett https://how-emotions-are-made.com/notes/William_James_and_Wilhelm_Wundt (2017)
James, W.(1884) What is an Emotion? Mind , Apr., 1884, Vol. 9, No. 34 , pp. 188-205 (https://www.jstor.org/stable/2246769)
武藤世良・白井真理子(2024) 感情とは何か エモーション・スタディーズ 第9巻第 1号 pp. 6─32. (https://www.jstage.jst.go.jp/article/ems/9/1/9_ES902/_article/-char/ja/)
大平秀樹(2007) 感情制御における脳‐身体の機能的関連:スピノザに捧ぐ バイオフイードバック研究 34巻第2号 pp.3-8. (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbf/34/2/34_KJ00004718143/_article/-char/ja/)
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