学会発表のテーマは『被害者を理解するための気もちの言葉エクササイズ』です。 (その1)
第44回日本心理臨床学会(神戸市)での発表タイトルは、「問題行動のある知的・発達障害者等を対象とした『被害者を理解するための気もちの言葉エクササイズ』の着想と制作」です。
テーマは被害者(他者)や自己の感情に気づき、気もちの言葉(感情語)の理解を深め、被害者への共感的な理解をすすめることです。(性)問題行動のある対象者に対する心理支援/セラピーの教材、補強ツールとしての書きこみ式のワークシート、『被害者を理解するための気もちの言葉エクササイズ』です。
このエクササイズは対象者の特性に合わせて感情のリテラシーを強化するよう構成しています。リテラシーとは読み書き能力ですが、ある分野に関する知識やそれを活用する能力を含むことから、エクササイズでは感情語だけでなく、感情そのものを深め広げるワークシートも準備しています。
感情のリテラシーは4つの項目からなっています。
- 自己や被害者の感情に気づく
- 感情語の理解と使用を増やす
- 感情語の意味を正しく理解する
- 状況や文脈に合わせて感情語を使用する
被害者に対する共感的な感情理解が深まりにくく、被害者が加害を受けた時の気もちを尋ねても答えられない、一方対象者自身の感情についても、意味のはっきりしない“ふつう”が多く、被害者の感情同様に“わからない”と答え、支援が停滞しました。
自分の感情や思考内容をとらえて、あるいは感じとって、その内容を表現するには、感じとる能力や表現する言語力のなどが必要です。対象者には障害による制約などがあるので、「2.感情語の理解と使用」「3.感情語の意味理解」「4.感情語使用」についてのワークシートも用意しました。
「1.自己や被害者の感情に気づく」ことには、言いたくないという抵抗感や羞恥の気もち、責められたくないという思いなどが影響しているかもしれません。しかしながら、被害者の感情や思考を想像し考えることは加害者の必須のテーマであり責務のはずです。 『気もちの言葉エクササイズ』では、さらにも被害者への共感的理解を深めるシートを準備しました。
被害者への共感的理解を深める3つのポイントです。
- 加害の責任帰属の明確化
- 被害の影響の理解
- 被害時の様子や言動から被害者の感情を理解
「1.責任帰属」は加害を実行したのは自分であると認めることです。あいまいにしたままでは支援の効果は見込めません。
「2.被害の影響」では加害によって被害者がどんな被害を受けたかを知ります。被害者が受けた被害について加害者は説明を受けていないこともあり、よく知らないことが多い。規則を破ったというだけでは不十分です。
「3.被害者の感情の理解」はもっとも重要なポイントです。被害時の様子や言動から被害者の感情を推測し理解します。被害者とはこんな感情をもつものだ、などという知識によって被害者の感情を知ることではありません。共感とは、自分とは感じ方も考え方も異なる他者である被害者の被害時の行動や発言、表情などを手がかりに被害者の感情を想像し理解すること、との定義に基づいています(Ryan, Leversee, & Lane. 2010)。
『被害者を理解するための気もちの言葉エクササイズ』は、感情のリテラシー強化と被害者への共感的理解を深めることの二つを目的とした17のワークシートから構成されています。
さらに、次回に続きます。
閑話休題。これまで(性)問題行動の加害者などを対象とした教材や解説をいくつか刊行しました。多くの方にこの『被害者を理解するための気もちの言葉エクササイズ』を実践していただきたいので出版したいのですが、簡単ではありません。そこでPOD(プリント オン デイマンド)出版を知り,その準備をしています。インターネット上には、PODを手がける出版社/事業所がたくさんでています。
注文が入ったら(オン デイマンド)、印刷して発送する(プリント)という少部数にもむいている仕組みのようです。町の本屋さんでの販売は難しいですが、Amazonなら可能です。
写真の雑誌IN/SECTの特集「本をつくって本を売る」(LLCインセクツ)では小規模出版の書き手,作り手、売り手、読み手が特集されています。全国に広がって盛んになりつつあるのがわかります。
茶色の「ミュージアムグッズパスポート vol.5」(大澤夏美 編集 発行)は大阪市梅香にあるシカク(出版)で買った本で、美術館のミュージアムショップにまつわる専門誌です。
「知らない価値観に出会えるZINE・同人誌のセレクトショップ」とアピールするシカクhttps://tanoshikaku.net/には、見たこともない本が壁いっぱいに並んでいます。
ZINEについては経済産業省のオンラインジャーナルが詳しい。https://journal.meti.go.jp/p/37349/
Ryan, G., Leversee, T., & Lane, S. (2010). Juvenile Sexual Offending: Cause, Consequences, and Correction. 3rd edition. John Wiley & Sons, Inc.
(タカシホンダ)


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