『未成年者の性加害』を再開。今回のテーマは性加害者に対する支援者をめぐる問題です。(その1)

 出版準備を進めている『気もちの言葉エクササイズ』は加筆修正に手間取っており、あと少しで最後の段階に入ります。 それまでの間、以前に進めていたRyan, Leversee, and Lane(2010)の「未成年者の性加害:原因、結果、矯正 JUVENILE SEXUAL OFFENDING: Cause, Consequences, and Correctionを再開します。

 本書は以下の7のセクション(仮訳)に分かれています。

1 問題

2 原因:理論と調査研究

3 未成年者性加害の結果の重大性

4 矯正:特別な介入

5  治療:目標志向アプローチにおける統合的理論と治療

6 加害予防

7  性加害に関わる 

 セクション4.の「14 連続的ケアによる包括的なサービス提供」を昨年の8月にブログに載せました。順序通りならば「15 大人の責任: 加害中心のスーパービジョンとケア」になりますが、焦点を変えて、セクション7.の「7. 性加害に関わる」にとび、「23  支援者に対する性加害の影響」をご紹介します。著者は、本書の著者でもあるGail Ryan, Sandy Lane, and Tom Leverseeです

 タイトルのInterventionistを訳せば、「介入者」ですがあまり馴染みのあるとはいえず、また介入という言葉も第三者が割って入るとという印象を伴います。ここでは境界が曖昧で範囲が広いですが「支援者」とします。
 性加害のテーマと言えば、問題行動を中心に加害、被害に関するアセスメントや心理支援・社会的支援の技法など比重があります。社会からも要請も同じです。一方、支援を実行する側に焦点が移ることはほとんどありません。ここでは性加害の実行者に対する支援者/セラピストへの影響がテーマです。

 この章では、人としても職業としても支援者は「リスクにさらされている」という問題意識があります。このリスクは、性加害の実行者に対する心理支援や生活支援を実践に伴って、個人の現実認識、考え方、ものごとの受け取り方に起因し、支援の実践経験を自分の世界観にまとめていくうえで生じているととらえています。

 性加害の詳細は聞くに堪えない痛ましくて、時に理解できず圧倒されることがあるかもしれません。こうした情報に曝されることから身を守りるためには、適応的な防衛機制によることがありです。
 加害行動の内容や歪んだ加害者の考え方に支援者が接し、自己の世界観からみた時に、「否認(不安をもたらす精神的なまたは行動的な対象者または支援者自身の現実を意識的に認識することを拒む)」や「知性化(理論や論理を駆使して不安から距離をおく)」などの防衛機制を用いているのではないか、との指摘があります。(p.444, Table 23.1 Defense Mechanisms)。ほかにも、「投影」や「抑圧」など精神分析の防衛に近いものもあげられていますが、加害者支援に伴って生じるという点で異なります。
 防衛が生じることはやむを得ないことで適応的なことだとしていますが、注意すべきはそれが過度に一般化されると不適応な状態におちいるというリスクがあるという点です。
 支援者は、こうしたリスクを認識して、業務における苦痛や混乱に対処しなければならない、としています。しかし、対処は解決にいたるとは限らず、業務は途切れることなく続き、終わりがないように感じるかもしれません。「シジフォス症候群」とよぶ研究者もいるそうです。
 よく知られているバーンアウト(燃え尽き症候群)は特別なことではないとされます。その予防には、正確な情報、適切な訓練とスキル、同僚からの十分な支援、個人の健康と自己主張、責任と意思決定の共有、さらにオープンなコミュニケーション、管理職の共感と支援が必要だとされます。こうした予防策は、支援者個人だけでなく、属する機関や事業所全体が機能不全に陥ることなく実行しなくてはなりません。

 さらに、具体的な課題について検討が進みます。

                          (タカシホンダ)

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